木造菩薩半跏像(伝如意輪観音)| 宝菩提院 [京都府]

謎に満ちた異国の美――観る者の心を揺さぶる「奇跡の美仏」

国宝《木造菩薩半跏像(伝如意輪観音)》――静寂のなかに宿る凛とした眼差し

京都で一番小さいとも言われる拝観寺院、宝菩提院願徳寺。その静まり返った本堂のなかで、ひときわ異彩を放つ仏様がいる。今から約1200年前の平安時代初期(8〜10世紀)に作られたとされる国宝《木造菩薩半跏像(伝如意輪観音)》だ。
「拝観していると、なぜか自然と涙が流れてくる」と語る参拝者も少なくない。知識の有無を問わず、人々の心を掴んで離さないこの仏像には、多くの謎と数々の見どころが詰まっている。

1. 「如意輪観音」ではない?尊名をめぐる謎

寺院では古くから「如意輪観音(にょいりんかんのん)」として信仰されてきたが、実は本来の尊名(仏様の種類)は分かっていない。一般的な如意輪観音は6本の腕を持ち、物憂げに頬杖をつく姿をしているが、この像は腕が2本しかなく、右足を下ろして座る「半跏像(はんかぞう)」の姿をとる。
左手が後から補われたものであるため決定打に欠け、国宝指定の名称もあえて広義の「菩薩半跏像」とされているのだ。聖観音や虚空蔵菩薩とする説もあり、その正体はいまも神秘のベールに包まれている。

2. 異国情緒を漂わせる「唐風」のディテール

像高は約88.2センチメートル。一本のカヤの木から彫り出された「一木造(いちぼくづくり)」で、金箔や彩色を施さない素朴な木肌のままで仕上げられている。
特筆すべきは、日本の仏像には珍しいエキゾチックな雰囲気だ。うねるように複雑に波打つダイナミックな衣の表現(衣文)、頭部や腰を飾る精緻な装飾、そして背面で交差する天衣の構造などは、中国・唐の時代の彫刻スタイル(唐風)を色濃く反映している。あまりの完成度の高さから、中国からの渡来仏、あるいは渡来人の名工が手がけたのではないかとも囁かれている。

3. 優しさと厳しさが同居する「凛とした表情」

ふっくらとした丸顔の頬は柔らかさを感じさせるが、その表情はただ優しいだけではない。キュッと結ばれた唇と、遠くを見据えるような凛とした鋭い眼差しには、衆生(生きとし生けるもの)を救わんとする強い意志が宿っている。瞳には黒い石が嵌め込まれており、本堂のわずかな光を受けて時折妖艶に煌めく様は、息をのむほどに美しい。

基本情報

指定番号 103
保管・所有 宝菩提院
名称 木造菩薩半跏像(伝如意輪観音・本堂安置)
時代 平安
指定 1957年

アクセス

名称 仏華林山 宝菩提院 願徳寺(がんとくじ)
所在地 京都府京都市西京区大原野南春日町
宗派 天台宗
アクセス ・阪急「東向日駅」→ 阪急バス「南春日町」下車
・JR「向日町駅」→ 阪急バス「南春日町」下車
・自家用車推奨(駐車場あり)
拝観時間 9:30〜16:00
拝観日 2月は拝観休止(公開なし)
拝観料 500円
文化財 ・木造菩薩半跏像(伝如意輪観音・本堂安置)
・その他寺宝多数
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