羽黒山五重塔は山形県鶴岡市の羽黒山に建つ国宝の塔であり、出羽三山信仰を象徴する存在である。現在は出羽三山神社の参道沿いにあるが、もともとは神仏習合時代の羽黒山寂光寺に属する仏塔として建てられた。東北地方に現存する唯一の国宝五重塔として知られ、出羽三山を訪れる参拝者を千年以上にわたり見守り続けてきた。
羽黒山といえば2446段の石段や杉並木が有名だが、その参道の途中に突然現れるのが五重塔である。高さ約29メートル、三間五層の杮葺による素木造りで、鮮やかな彩色を施さない姿が周囲の自然と見事に調和している。寺社建築というよりも、森そのものから生えてきたような存在感がある。
創建は平将門によるものと伝えられているが、現在の塔は室町時代以前の様式を伝える建築であり、慶長13年(1608年)に出羽52万石の大名・最上義光による大修理が行われたことが分かっている。長い歴史の中で戦乱や災害を乗り越え、現在まで美しい姿を残してきた。
羽黒山五重塔の魅力は、その立地にある。法隆寺や醍醐寺の五重塔は伽藍の中心として建つが、羽黒山五重塔は深い杉林の中に独立して建っている。参道を歩き、祓川を渡り、巨木の森へ入った先で初めてその姿が現れるため、建築物というより信仰の風景として記憶に残る。
建築として見ても完成度は高い。軒の出が深く、各層の逓減は緩やかで、全体に安定感がある。華やかな装飾で見る者を圧倒する塔ではなく、均整の取れた美しい比例によって魅せる塔である。雪深い庄内地方の自然環境の中で育まれた独特の美意識を感じることができる。
また、羽黒山五重塔は出羽三山信仰の入口でもある。月山が過去、羽黒山が現在、湯殿山が未来を表すとされる三山信仰の中で、羽黒山は現世を象徴する山である。参道を登りながら五重塔を仰ぐ体験そのものが、古くから続く山岳信仰の一部となっている。
国宝建築としての価値はもちろん高い。しかし羽黒山五重塔の本当の魅力は、塔だけを切り出して鑑賞するのではなく、杉並木、石段、祓川、そして出羽三山信仰の歴史とともに味わうことにある。日本の五重塔の中でも、最も風景と一体化した塔の一つといえるだろう。




文化財


基本情報
| 名称 | 羽黒山 五重塔(はぐろさん ごじゅうのとう) |
|---|---|
| 所在地 | 〒997-0211 山形県鶴岡市羽黒町手向字羽黒山 |
| 宗派 | 出羽三山神社(神仏習合遺構) |
| 本尊 | 阿弥陀如来像・大内義弘像(塔内安置) |
| 電話番号 | 0235-62-2355 |
| 拝観時間 |
見学自由 (特別拝観は期間限定) |
| 拝観料 |
五重塔見学無料 特別拝観は別料金 |
| 公式HP | https://hagurokanko.jp/facility/gojunotou/ |
| アクセス |
JR鶴岡駅から庄内交通バス約35分「随神門」下車、徒歩約10分 山形自動車道「庄内あさひIC」から車で約30分 |
| 御朱印 | あり(出羽三山神社) |
巡礼記録
2017年
