大法寺は長野県青木村にある天台宗の古刹である。創建は奈良時代まで遡るとされ、東山道浦野駅に関わる寺院として発展したと考えられている。千三百年近い歴史を持つ信州有数の古寺だが、その名を全国に知らしめているのは境内の国宝三重塔である。
大法寺を訪れる人の多くが目当てにするのは、「見返りの塔」の愛称で親しまれる国宝三重塔だ。あまりの美しさに、通り過ぎた人が思わず振り返って見入ってしまうことからそう呼ばれるようになったという。正慶2年(1333年)建立のこの塔は、周囲の自然と見事に調和し、華美ではないが気品に満ちた姿を見せている。
実際に境内を歩くと、その呼び名の意味がよく分かる。塔は山の斜面に静かに建ち、木々の間から姿を現す。その均整の取れた姿はどの角度から見ても美しく、離れようとしてもつい何度も振り返ってしまう。全国には名高い塔が数多く存在するが、「見返りの塔」という愛称をこれほど自然に受け入れられる塔は多くない。
しかし大法寺の魅力は三重塔だけではない。観音堂には重要文化財の十一面観音菩薩立像と普賢菩薩立像が安置されており、いずれも平安時代後期の作とされる。さらに堂内には重要文化財の厨子と須弥壇が残り、その屋根には木製としては日本最古級とされる鯱が据えられている。
また、大法寺は塩田平周辺に点在する中世寺院群の一角を占めている。近くには安楽寺や常楽寺などの名刹があり、この地域が「信州の鎌倉」と呼ばれる理由を実感できる。大法寺はその中でも特に景観の美しさに優れた寺として知られている。
壮大な伽藍や華やかな装飾で圧倒する寺ではない。しかし、山里の静けさの中に佇む国宝三重塔には、不思議な存在感がある。信州の自然と中世建築が一体となった風景は、大法寺でしか味わえない魅力といえるだろう。


文化財


巡礼の記録
2026年7月10日
JR上田駅からバスに乗り、当郷で下車した。そこから田んぼの中の道を15分ほど歩き、午前9時頃に大法寺へ到着した。
境内に入ると、正面には観音堂が建っている。落ち着いた佇まいで、長い歴史を感じさせる建物だった。そして左手の石段を上った先には、国宝の三重塔が姿を現す。
この三重塔は「見返りの塔」と呼ばれている。写真では何度も見ていたが、実物は想像以上に美しかった。大きすぎず小さすぎず、周囲の木々や山並みとの調和が見事である。
拝観料を納めて観音堂の内部を見学した。住職自ら説明をしてくださり、寺の歴史や文化財について詳しく知ることができた。
重要文化財の十一面観音立像と普賢菩薩立像を間近で拝観できたのは貴重な体験だった。また、重要文化財の厨子と須弥壇も見応えがある。特に厨子の棟の両端には鯱が取り付けられており、日本最古の鯱とされていることが印象に残った。
境内は非常によく整備されていた。炎天下にもかかわらず、住職自ら庭木の手入れをされており、寺を大切に守っていることが伝わってくる。
参拝を終えて大法寺を後にした。しばらく歩いたところで、ふと「三重塔はまだ見えるだろうか」と思い、振り返った。遠くに見える塔の姿は相変わらず美しく、思わず見入ってしまった。その瞬間、「見返りの塔」と呼ばれる理由を実感した。


基本情報
| 名称 | 一乗山 大法寺(だいほうじ) |
|---|---|
| 所在地 | 〒386-1603 長野県小県郡青木村当郷2052 |
| 宗派 | 天台宗 |
| 本尊 | 釈迦如来 |
| 電話番号 | 0268-49-2256 |
| 拝観時間 |
4月~10月:9:00~17:00 11月~3月:9:00~16:00 |
| 拝観料 |
大人 300円 小中学生 100円 障がい者手帳所持者 200円 特別拝観 700円 |
| 公式HP | https://www.daihoujitemple.com/ |
| アクセス |
JR上田駅からタクシー約30分 上田菅平ICから車で約25分 麻績ICから車で約30分 |
| 御朱印 | あり |
