綾部市北部の山深い君尾山に佇む光明寺は、京都府北部を代表する古刹である。現在は静かな山寺だが、最盛期には72坊を擁する大寺院として栄え、丹波・丹後一帯の信仰を集めていたという。寺伝では聖徳太子の創建と伝わり、その後、理源大師聖宝によって真言密教の道場として中興された。
光明寺を訪れてまず驚かされるのは、その立地である。集落を離れて山道を進み、深い杉林の中へ入っていく。寺が近づいている気配はほとんどない。ところが石段を登り始めると、緑の森の中から鮮やかな朱色が現れ、その先に国宝の二王門が突然姿を見せる。まるで山そのものが長い歴史を秘めていたかのような印象を受ける。
この二王門は1248年建立の鎌倉時代建築で、京都府北部に現存する唯一の国宝建造物として知られる。戦国期の度重なる兵火によって堂宇の多くが失われるなか、奇跡的に焼失を免れ、およそ八百年近い歴史を今に伝えている。
門内には重要文化財の金剛力士像が安置され、その迫力は国宝建築に少しも負けていない。さらに石段を登れば、山々に囲まれた静寂の中に大きな本堂が現れる。豪壮な伽藍を誇った往時の面影を想像しながら参拝できるのも、この寺の魅力である。
光明寺は華やかな観光寺院ではない。アクセスも決して良いとはいえない。しかし、その不便さゆえに残された深い山の静けさと、森の中に屹立する国宝二王門の存在感は、京都市内の名刹ではなかなか味わえない。京都府北部屈指の「山岳古刹」と呼ぶにふさわしい寺院である。
文化財




巡礼の記録
2026年8月15日
東京から夜行バスに乗り、朝5時50分に京都駅へ到着した。
6時37分発の列車で園部を経由し、綾部駅には8時25分に到着。駅前のあやべ観光案内所で予約していたレンタサイクルを借りた。事前に光明寺へ向かうことと、12時返却予定であることをメールで伝えていた。
受付で改めて返却予定時刻を聞かれ、12時頃と答えると、「普通に走って片道2時間、頑張っても1時間半くらいだと思います」と心配された。しかし、どうしても11時56分発の京都方面行き特急に乗る必要があった。
「頑張ります!」
そう答えて8時40分に出発した。



光明寺までは片道24km。市街地を抜けると信号はほとんどなくなり、走りやすい道が続く。緩やかな上り坂が続き、下り坂になるたびに「帰りはここを登るのか」と考えながらペダルを踏んだ。
最後の山道は予想以上に厳しかった。途中では野生の鹿が飛び出し、思わずブレーキをかける場面もあった。
それでも走り続け、往路1時間10分で光明寺に到着した。
駐車場から石段を登る。杉木立の緑の中に鮮やかな朱色が見え始める。そして突然、目の前に巨大な二王門が現れた。あまりにも唐突に現れるため、一瞬息をのむ。国宝の二王門は想像以上の大きさだった。門内に安置された阿形・吽形の金剛力士像も迫力があり、長い歴史を感じさせる。
さらに石段を登ると展望デッキがあり、綾部の山並みを一望できた。最後の階段を登り切ると本堂に到着する。京都府指定文化財の本堂は予想以上に大きく、向拝の彫刻も見事だった。
滞在時間は約30分。
帰路は下り坂が多く、往路より楽だったが、時間との戦いは続く。休憩も最小限にして走り続け、1時間5分で綾部駅へ戻った。
11時30分、自転車を返却。受付の方は驚いた表情で、
「サキサキさん、すごいですね! 本当に予定通りですね!!」
と声をかけてくれた。
光明寺の参拝も印象深かったが、山中の古刹まで往復48kmを走り、予定していた特急に間に合わせるという小さな挑戦そのものが、この日の忘れられない思い出となった。



基本情報
| 名称 | 君尾山 光明寺 |
|---|---|
| 所在地 | 京都府綾部市睦寄町君尾1-1 |
| 宗派 | 真言宗醍醐派 |
| 本尊 | 千手観音(秘仏) |
| 創建 | 599年(推古天皇7年、伝) |
| 開基 | 聖徳太子(伝) |
| 御朱印 |
あり(奥京都国宝・重要文化財十ヶ寺巡りの札所) ※状況により「あやべ温泉 仁王の湯」で授与される場合あり |
| 拝観料 | 無料 |
| 電話番号 | 0773-55-0550 |
| アクセス |
JR綾部駅からあやバス利用、「あやべ温泉前」下車後徒歩約40分 JR綾部駅から自転車で約1時間10分 自家用車推奨 (無料駐車場有) |
